「だから言ってんだろうが、
  野郎が女の両腕折って襲ってたんで止めただけだ。」

 「其れは立派なんだがなあ。
  何で其処で男の両腕も折るんだよ。」

 「目には目を、歯には歯をって言うだろ?
  大体犯罪起こす奴ってのは欲望の固まりか
  起こされる側の事も考えられない無能なんだよ。」

 何回も繰り返された持論の応酬。
 袴田は一結びにした髪を掻いた。

 「でも男と女、『二人』から被害届け出てるんだぞ?
  あと此れだ、何か硫酸掛けて溶かした殺人もお前の仕業になってるな。」

 「それはIFPの不手際だな、言ってくれよ。」

 「もう言ったよ。」

 「そうか、有難う。」

 袴田は溜息を付いた。

 柊は完全に己の考えに従って生きているだけ、何も悪い事をしていない。
 むしろ見方によれば良い事しかしていない。
 餓鬼の頃最初に会った時はどんな不良かと思ったが・・・。
 なのにこいつにはずっと手を焼かされる。

 周りの教員も苦笑いしつつ問答を見ている様だ。

 「はあ・・・・・・。」

 こいつが悪いのか、理解し様ともしない世間が悪いのか・・・。

 「溜息を付くと幸せが逃げるぞ袴田教員。
  って言うけど絶対嘘だよなあれ。」

 「溜息付く時点で幸せじゃないだろ・・・。
  っつーかそんな話じゃなくてな・・・・・・。
  全く・・・・・・、今日は偉大な人が来るってのに何故こんな事に・・・。」

 「偉大な人?
  世界政府の役人でも来るのか?」

 「んな役にも立たない地位馬鹿はいらんよ。」

 「じゃあ誰だよ?」

 「・・・・・・そうだな、まあ言っても良いか。
  実はだな・・・・・・――――――

 袴田が言い掛けた所で外で小さな歓声が湧いた。

 「ん?もう来たのか?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・?」