無刃斧から指が抜かれると同時に大男は下がる。
 だが相変わらずこの二人は『ジキルとハイド』はどうでも良い様だ。

 「殺す気か!?」

 「え・・・・・・何で・・・?」

 「何でだあこの餓鬼が!
  しこたま殴ったあと謎のガス噴き付けやがって!」

 「が・・・・・・、失礼だな君は!
  私は18だ!」

 「21に比べりゃ18は餓鬼だ。
  帰って寝てやがれ。」

 「断るよ、私はまだやる事が有るんでね。」

 「こいつらに絡まれて言ってられる台詞じゃねえと思うけどな。」

 男は親指で『ジキルとハイド』を差した。

 「ああ、忘れられてたかと思っていたって意味さあね。」

 「こいつらは『ジキルとハイド』。
  この都市じゃかなり有名な殺し屋だ。
  こいつらに狙われてんじゃてめえは運が無えな。」

 「ああ、知っていたのかって意味さあね。」

 「良く他人事の様に言えるな君は。
  君も見たからには殺すと言われているんだぞ?」

 「まあな。」

 「良く分かっているって意味さあね。
  素性も割れている様だし、生かして帰さないって意味さあね。
  KILL、殺ってくれって意味さあね。
  二人いるからHYDも加わるって意味さあね。」

 「おおうっ!」

 「来るみたいだね。」

 「そうだな・・・。」

 そういう男は前を見ず、空と時計を交互に見ている。

 「君余所見をしている場合か!?
  こうなったからには行くぞ、応戦する!」

 「油断は一瞬の命取りだって意味さあね。」

 ジキルとハイドは男と少女に向かい疾走した。

 「君!?」

 「ああ行くぜ?
  だが行くのは・・・・・・、空だ!」

 そう言うと突如男は少女を脇に抱え飛んだ。

 「なっ!」

 高い、いや高過ぎる。

 驚いている内に男は空中に留まった。
 超常現象ではない、只飛行船の端に片腕で捕まっただけだ。