「随分と乱暴だな。」

 風が吹くなか端とはいえ船上に降ろされ、少女は男を見た。

 「文句を言うな、助かっただろ?」

 「・・・・・・・・・・・・君は、何者だ?」

 「礼も言わずに詮索かよ。
  まあ良い、俺は青院4年の・・・・・・いややっぱ止めた。
  名乗るってのは趣味じゃねえ。」

 「・・・・・・そうか、では私も名乗らない。」

 「そうかい。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  (しかし・・・・・・、此の意味不明なジャンプ力はまだしもあのガスを吸って・・・。)」

 「俺はこのまま家に帰る、お前はどうすんだ?」

 「私は先程言った通り用事が有るんでな、船を降りる。」

 「送ってってやろうか?高度高いぜここ?」

 「結構だ、此れでも私は魔法使い。
  君が思っているよりはずっと強いよ。」

 そう言うと少女は風吹き抜ける先端に立った。

 「もう二度と会う事も無えだろうな、じゃあな。」

 「・・・・・・人生そう広くも無いかもしれないぞ?」

 「あ?・・・・・・・・・・・・。」

 少女はそれから何も言わず落ちていった。

 「ま、自分で何とかするだろ。
  しかし厄介な奴等に会っちまったな・・・・・・。」



 それから数時間後、日が変わった真夜中。
 少女はまだ都市を歩いていた。

 「そろそろのはずなんだが・・・、しかし此の都市は治安が悪い・・・。
  ・・・・・・あの二人に会わなかったのは幸運だった・・・!」

 目の前に巨大な体躯をした狼が現れた。
 どういうわけか高さだけで4mは有りそうだ。

 「全く・・・・・・またか。」

 意外と冷静に少女は対応する。
 既に何回か応対していたらしい、この都市はそういう所だ。

 「随分と治安が悪いね・・・。
  学院から離れているから良いけど。」

 大口を開けた狼に向かい紫色のガスを一吹き吹き付ける。
 途端に狼は転がってしまった。

 「やっぱり・・・・・・効くよね・・・。
  一体何だったんだろう彼は・・・・・・。」



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