5分後、血塗れの手を拭きながら彼は歩く。

 強盗殺人、丁寧に強酸を掛け証拠を全て溶かし去りながら。

 『知ってるぞ、青院4年の北上神(ほくじょうしん)!』

 動かなくなったのは纏めてIFP署の前に捨てておいた。

 同じ様な事はもう今日で6件目。
 明日学校に連絡が行くのが恐らく4件。
 疎まれる身、次は停学では済まないかもしれない。

 「世の中、所詮そんなもんだ。」

 彼は呟く。

 「ちょ、ちょっと・・・!
  何だい君達は・・・・・・?」


 真っ暗な路地裏の向こう。
 聞こえた、直線距離にして658m。

 「俺には関係無い。」

 彼は言い聞かせる様に言った。

 事実、彼に本当に何も関係無い。
 家に帰れば独りで気楽な空間と冷めたコンビニの飯が待っている。

 彼は声と逆方向に歩き出した。
 シャットアウトした声は次第に小さくなっていく。

 やがて全く聞こえなくなった。



 「ああもう、何でこうなるかな。」

 風呂敷を抱えた者が頭を掻く。

 「道を教えて貰おうと声を掛けただけなのに・・・、
  此の都市の人間は声を掛けられたら襲う様に言われてるのか?」

 声から察するに女らしい。
 背丈は140cm強、額に宝石が輝いている。

 「俺等に声掛けたってのが運の付きって意味さあね、
  作戦決行時に止めたのが悪いって意味さあね。」

 二人のうち頭と思われる者が言った。