「すごいでしょ、色々あるよ?」

 雷太は思わずサイン集を高速でめくる。

 「『“鋼壁魔帝”グラセス・ルシエル』・・・、
  『“餓狼帝”フェンリル・エスヴェヴィルド』・・・、
  過去の歴代IFP将校達・・・、
  げっ!?『竜宮之姫(おとひめ)』!?
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・実在したのか!?」

 「ああ、確か・・・・・・400年ぐらい前に海底で会ったのかな?」

 「え?・・・・・・これ自作なの!?売り物じゃなくて?」

 「そうだよ?」

 雷太はサイン帳を良く見た。
 確かに、殆ど手書きだし表紙も自作のようだ。

 「世界中を回ったからねえ・・・・・・。」

 「世界中?」

 「・・・・・・そうか、雷ちゃんには言ってなかったっけ・・・。
  俺、デューク達に会うまではずっと世界を旅してたんだよ。」

 「へぇ、そうなんだ?」

 「なにしろ、仲間なんていなかったからね。」

 「・・・・・・・・・・・・。」

 「・・・何十年も、何百年も、それ以上を・・・・・・たった一人で・・・。」

 雷太には何も言えなかった。
 自分には独りの経験等ない・・・。
 そんな自分が悲しみの表情を浮かべている今のD・Jに、
 声を掛けて励ますだなんて出来ないに違いないと思ったのだ。

 D・Jはそんな雷太の顔を見て静かに笑った。

 「・・・・・・・・・でもね!」

 D・Jはその場で勢いよく立ち上がった。

 「俺は思うんだ。
  その長い『独り』があったからこそ、デューク達や雷ちゃんと出会えたんじゃないかって。
  だからこそ俺は今、この楽しい生活を守りたい。絶対に、二度と失いたくないんだ。」

 「・・・・・・D・J・・・。」