「お、おいクロ、どこ行くんだよ?」

 雷太が思わず止める。

 「言ってただろ?俺は今日出かけるんだ。
  『水の町』の町長『椎名』と会合の予定を取っていてな。
  もう話も済んだだろ?だから今から用意して行くんだよ。」

 背を向けたままクロは言った。

 「さっきから行く行く言ってたのに用意もしてなかったのか?」

 雷太が呆れたように言うと、
 クロはぴたっと止まりゆっくりと後ろを振り返って言った。

 「・・・・・・お前が遅刻した上に伸ばしたんだろうが・・・!」

 「ひ、ひいぃぃ!?ごめんなさい!??」

 「ふんっ・・・。」

 そう言ってクロは扉を開けた。

 慌ててレインが声を掛ける。

 「あ、あの〜・・・私幽体なんで行くとこないんです・・・。
  も、もし良かったら広そうですし、ここにいちゃ駄目ですか?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 クロは何も言わずに背を向けたまま何かを後ろに放り投げた。

 その何かはそのまま、レインが広げた両手の中にすぽっと収まった。

 《ストライク!》

 クロが投げたのは鍵だ。
 クロの家の部屋の番号の一つが鍵に彫られている。

 「まったく〜、クロぷ〜は恥ずかしがりやだなあ♪」

 デュークが明るく言った。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 レインはクロが既に見えなくなった後も、
 じ〜っと廊下を見つめている。

 「ん?気にしなくていいよ?
  ああいうやつだからね、クロぷ〜は。」

 「いえ・・・そうじゃなくて・・・・・・。
  なんだかクロさんって・・・・・・・・・、
  『ヴェルサス』さんに似てるなぁ・・・・・・と思いまして。」

 「『う゛ぇるさす』?」

 「いえ・・・。
  私が生きていた頃のお友達です。気にしないで下さい。」

 「そんなに似てるの?」

 「はい、もう瓜二つですね・・・。
  顔や行動、刀を使われるとこまで何もかも。
  あ、ただ『ヴェルサス』さんの方がもっと暗かったですね。
  あと白いです。」

 「へぇ〜、そんな人が昔いたんだ〜・・・。(・・・・・・白い?)」