クロは新しい煙草に火を付けた。
「じゃあまず聞くが、人が死んだらどうなるか知ってるか?」
「腐る。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。
肉体と精神に分かれるんだ。所謂『魂』ってやつだな。」
「へぇ〜、それが幽霊か・・・?
・・・・・・え!?って事は皆幽霊になるじゃねえか!?」
「まあ聞け。
普通の魂なら、元の肉体は使い物にならないし
魂自体の意思も薄くすぐに此の世からは消滅するんだ。」
「あ、そうなのか。
そりゃもしそうだったら幽霊だらけになるもんな。」
「そうだ。ただし中には普通じゃない魂もいる。
例えば余りにも強い怨念や思いを残して死んだ者の中には、
ある程度の意思を持つ魂になる事もあるんだ。
そういう魂は例外なく消滅を嫌う。
しかし魂のままでは一部除き必ず消滅する。
器の無い水は流れるからな、器、媒介が必要なんだ。」
「器・・・媒介???
何かに憑りつくって事か?」
「そうだ。基本的には物だな。」
「人間には?」
「人間どころか他生物でも無理だな。
魂と肉体がぴったりくっついているんで何も出来ない。
しかも器、媒介を得ても不安定な事が多い。
そしてその意思がある魂を、肉体をもじった言葉で『幽体』と呼ぶんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ稀に幽霊とか呼ぶやつもいるけどな。」
「うっ・・・!
・・・・・・でもレインさんは何に憑依してるんだ?
どうみてもただの幽れ・・・幽体にしか見えないんだけど・・・?」
「そう、そこが特殊でな。
レインは意思がはっきりしている上に、
魂のみで存在できる限りなく珍しい幽体なんだ。
・・・・・・しかも完全な人間のままでな。」
「へぇ〜・・・。」
雷太は驚いたような微妙な返事をした。
何も知らずに珍しいものを体感していた者の反応だ。