「元気出たかい?」

 ミルクをすっかり腹に詰め込んだアズキが聞いた。

 「・・・ああ、アズキさんもありがとう!」

 「良いさ、それじゃ帰るよ?」

 「ああ・・・、また来るよ。」

 「ええ、いつでもいらっしゃいな、坊や。」

 早苗はにっこりと笑った。

 「あ、ちょっと待って?」

 「ん?」

 「お近づきのしるしにこれあげるわ。」

 早苗は奥から妙な木の箱を持ってきた。

 開けると中にはランプのような物が入っている。

 「・・・・・・ランプ・・・?」

 「ええ、酔ったお客さんがくれたんだけど、
  結構高価な物みたいよ?私はそういうの興味ないから。
  良かったら貰ってくれないかしら?」

 綺麗に磨かれてはいるが、相当に古い物らしい。
 アラビアンナイトのランプをイメージしてもらえば良いだろう。

 「良いの?」

 「ええ♪」

 「そうか、じゃあせっかくだから貰うよ。ありがとう。」

 「またいつでも来てね。」

 雷太とアズキは店を出た。

 「じゃあ、あたしゃ帰るよ?」

 「ああ、今日はありがとう。アズキさん。」

 「良いってことさ。」

 そういうとアズキは走りさって行った。

 雷太は今朝とは全く違う明るい空気を身にまとい、
 帰り道を歩き出した。

 右に王のランプを抱えて。



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