確かに、サインは求められる。
 しかし、魔法は求められない。
 いつもなら、この世で雷太しか使えない魔法である
 ヤイバを求める声が聞こえることだろう・・・・・・。

 皆、分かっているのだ。

 皆、怖がっているのだ。

 皆、口にさえ出したくないのだ。



 魔人 クライヴ・キーファー



 やがて雷太は、館内のある場所にやってきた。

 他とは隔絶されたように静かで、神聖さが漂っている。

 その部屋にあるのは、三枚の額に入った大きな写真だけだ。



 大魔剣士 氷室 秋水

 黒き魔性 ジュエット・ウィッチ

 魔道の支配者 ジョー・ディヴィル



 ウィッチとディヴィルには写真が無く、額中は空で説明しかないが、
 一方の氷室 秋水は写真がある。
 薄青髪を真ん中分けにした、優しそうな男だ。

 「秋水さん・・・・・・。」

 雷太はつぶやいた。

 大魔剣士 氷室 秋水。
 魔道の位を持ってはいないが、偉大と言われ、
 かのジョー・ディヴィル、ジュエット・ウィッチと並ぶとされる。
 しかし、雷太には何か別の思い入れがあるようだ。

 「新太郎も無理にでも連れてくれば良かったかな・・・?
  あいつも秋水さん懐かしがるだろうし・・・・・・。」

 どうやら、新太郎にも関係があるようだ。

 やがて雷太は博物館を出た。