雷太は少し歩いた後、ある店へ入っていった。
 店の名前は『秋雨』。
 どうやら、一種の大衆酒場のようなものらしい。

 「あれ?雷太さんじゃないか。御久し振り。」

 中に入ると若いマスターらしき人物から声を掛けられた。
 流石に第一級魔導士。この街では特に有名だ。
 省略しているが、街中でも多数声を掛けられている。

 「ああ、久し振り。
  確かウォルフの名前で予約取っているはずだけど?」

 「ああ、奥の方だね。
  入っていると良いよ。まだ誰も来てないけどね。」

 「ああ、ありがとう。」

 雷太は奥の部屋に入った。
 障子で仕切られた座敷楼で、上品な音楽が掛かっている。



 出された茶を飲みながら雷太は本を読んでいる。

 すると・・・・・・。



 ガラッ!



 突然障子が開かれた。
 そこにいるのは・・・・・・・・・。

 「雷太さん!来てくれたんですね!!」

 この元気な声はウォルフだ。

 「ああ、約束なんでな。」

 と、言いつつも雷太は心の中で身構えている。
 いつかのように突然抱きつかれるだろうからだ。

 しかし、ウォルフは動かない。
 雷太が不思議に思っていると・・・、

 「こんにちは。」

 ウォルフの後ろからシーバスが声を掛けた。

 「ああ、久し振り。
  ・・・・・・まあ、座ろうぜ?」

 「そうですね・・・・・・。」

 ウォルフとシーバスは雷太の向かい側の席に座る。

 その時、雷太は見てしまった。
 ・・・ウォルフの背にシーバスの杖が突きつけられている・・・・・・。
 どうりでウォルフが何もしなかったはずだ・・・・・・。

 雷太は目をそらした。



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