雷太は氷雨の後に続いて、クロの家の中を歩いていた。

 「ねえ、氷雨さんはどのくらい前からここで働いているの?」

 雷太の緊張はだいぶほぐれたようだ。

 歩みを止めずに氷雨は答える。

 「・・・もう少しでちょうど3年になります。」

 「へぇ。じゃあ俺が修業に行ったすぐ後に来たんだ?」

 「はい、そうです。」

 雷太は少し考えた。

 「・・・とうとうクロはメイドさんを雇ったのか・・・。何人ぐらいいるのかな?この家に。」

 「?わたし1人ですよ。」

 氷雨は不思議そうに答えた。

 「・・・・・・!!!?ええっ!!このバカでかい家を!?・・・・・・あの、お仕事の内容は・・・?」

 「掃除に選択、料理にお庭の手入れ・・・この家の殆ど全ての事をやらせていただいてます。」

 「ま・・・マジで?(そんな事人間に可能なのか???)」

 雷太が驚くのも無理はない。この大きすぎる家には、軽く考えても100人ほどの人材が必要なはずだ。
 しかも、氷雨の仕事は完璧らしく、廊下には塵一つ無いし、庭も美しい。

 「・・・・・・・・・。(すげえな・・・。ってかやっぱ人間どころか魔族でも無理だろ・・・・・・。
  ・・・・・・となると・・・・・・やっぱ『能力』かな・・・・・・・?)」

 彼らの間に暫しの沈黙が舞い降りた。その間も雷太は考えている。

 「・・・。(それにしても氷雨さんに会った時の不思議な感覚はなんだったんだろう・・・。
  ・・・分からないな・・・。・・・・・・あ!でも昔同じような感覚に襲われた事があったような・・・。
  ・・・・・・あれは確か・・・・・・、『秋水さん』の時だっけ・・・・・・?
  ・・・そういえばさっきから気になっているんだけど・・・・・・・・・・・・。)」

 ・・・・・・と、雷太が考えまくって読者に迷惑かけている間にも彼らは結構な距離を歩いている。

 雷太は一瞬考えを放棄して聞いた。

 「・・・ひ、氷雨さん・・・。・・・いったいどこに向かってるの?・・・結構歩いてるけど。」

 氷雨は明るく答える。

 「書斎No.3です。大丈夫ですよ、あと30分くらいで着きますから。」

 「・・・さ、30分・・・・・・。」

 雷太はげんなりした。