彼女の名はアズキ。
 これまでの状況言動で既に分かるだろうが、彼女は猫だ。
 傍目から見ると、白黒の毛を持つ普通の老猫。
 魔族でもないし、本当にただの猫である。
 ただし、なんと彼女は人語を話し、二足歩行ができるのである。
 しかし、それは一切の謎。その理由を聞くと、彼女は口を閉ざしてしまう。
 全く持って不可解だが、彼女は何か秘密があるらしい。

 彼女はエクセスに住んでいて、地元では結構有名だ。
 結構『いい性格』をしており、情熱に燃える若者をからかうのが趣味らしい。



 雷太とアズキは奥のテーブルに座った。
 もちろん、アズキはアズキ専用の高い椅子だ、

 彼女はここの常連である。
 雷太がいない時は、燃をからかっているらしい。

 「さて・・・、で、なんだよアズキさん?」

 雷太は聞いた。

 「まあ、待ちなよ。話すのは頼んだものが来てからさね。」

 やがて、石田が雷太にコーヒー。
 アズキに猫缶とミルクを持ってきた。
 が、その後すぐに石田は奥に引っ込んでしまった。
 どうやら、相変わらず仕事中に『機械性クロスワード』やパソコンをやっているらしい。

 《・・・本当に店長か?》

 一応、肩書きは。



 やがて、アズキは口を開いた。

 「聞いたよ坊や?えらいことやらかしたんだって?」

 「う・・・・・・・・・。」

 雷太はたじろいだ。自分のせいで組織大戦が復活したからだ。

 《なんだかんだ言って、戦争だからな♪》

 「で、でもあれは不可抗力だぜ!?ワープが・・・・・・。」

 「関係ないよ。結局、あんたは戦争を起こしたんじゃないか。」

 「うう・・・。」

 「まあ、大丈夫だよ。まだ何も起きてない。
  ほら、コーヒーに砂糖でも入れな。」

 「・・・え?いや、もう入れたけど。」

 雷太は驚いて言った。
 ちなみに、雷太はブラックは飲めないが、砂糖もそう入れない。

 「いいんだよ。こういう時は甘いものが一番良いのさ。
  ほら、甘いもの飲んで元気出しな。」

 「あ・・・・・・ああ。」

 雷太はアズキから粉末の入ったカップを受け取った。
 促されるまま、3杯程入れる。

 「しかし、久しぶりだな、アズキさぶうううぅぅ!!!――――――

 雷太はコーヒーを盛大に吹いた。

 「ぺっぺっ!!おい婆さん!これ塩じゃねえか!!!」

 「あははははははは!!」

 アズキはしてやったりと爆笑した。

 「相変わらず引っかかるね坊や。
  あたしが誰だか忘れたのかい?」