次第に、兵が一階へ降りてくる。

 凄惨なる現場、それに改めて驚くと共に、消えた神谷に涙を流す。

 「・・・・・・・・・・・・あの野郎、あんな力を隠しもってやがったのか・・・。」

 秋葉は静かにつぶやいた。
 自分には本気でなかった・・・・・・屈辱!
 しかし、心の中で安堵しているのも事実。
 彼は震える拳を深く握った。



 誰もいない廊下で、ヴィースは座り込んでいた。

 「はは・・・・・・強すぎですよ、雷太さん・・・。」

 震える手、携帯のボタンが上手く押せない。

 あれが『第一級魔導士の王』、そして我が組織の副総長。

 あの力で世界を奪る。そしてあのクロさんはもっと・・・・・・。

 「・・・・・・面白い・・・!」

 彼は立ち上がった。



 ヴィースが大広間一階へ戻る。

 兵に指示し、統率を取る秋葉へ声を掛ける。

 「早急に本部へ連絡し、修復の措置を取ろう。」

 秋葉は会釈した。ヴィースが戦わなかったのは当然のこと。
 責めるのは見当違いだ。

 「・・・・・・・・・・・・ありがとうございます。
  ・・・・・・・・・・・・ついでに、本部へ『龍 雷太』の情報を。」

 「ああ、分かった。全て僕が報告――――――

 「その必要は無い。」

 ヴィースと秋葉ははっとして声がした方を見た。

 いまだ炎がちらつく瓦礫を崩しかきわけ現れたのは・・・・・・、

 「神谷・・・大佐・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・ご存命でしたか・・・。」

 いや、存命どころではない、
 上半身の服は跡形も無いが、その体は――――――

 「・・・・・・!?(・・・馬鹿な・・・・・・無傷だと・・・!??)」

 ヴィースは信じられない。
 あれだけの炎を受けて無傷。
 付いているのはあの特殊な魔法『ヤイバ』に焼かれた傷のみ。
 少なくとも、能力『空砲』のおかげではない。
 彼は一体何者なのだろうか?