ズ・・・・・・ズズズズズ・・・


 神谷の後ろに、巨大な空気の渦が出来ている。

 その形はまるで――――――

 「・・・・・・準備完了だ・・・。」

 神谷は雷太を見据え言った。

 彼の後ろには多くの部屋、雷太の後ろには壊れた鉄壁。

 「こっちは、いつでもいい。」

 雷太は言った。


 バチ・・・バリッバリッ・・・


 彼の右手に蛍光黄緑の光が集まる。



 ――――――静寂。



 空気が渦巻く音、魔力が猛る音、そしてわずかな呼吸音。



 「行くぞ。」

 神谷は拳を握り、大きく振りかぶった。
 ピッチングマシーンのようにわずかに止まり、ゆっくりとした動きの後――――――

 「・・・『後月空砲』(しつきくうほう)!!」


 ゴオオオオオオオオ・・・


 巨大な球形の空砲。
 それはまるで迫る月。
 相手を飲み込まんと次第に迫る。



 バチッ・・・バリバリバリッ



 雷太の右手が激しく光る。