車は止まっている。

 運転手は運転席に入ったままだ。

 一緒に乗ってきた男にそう命令された。

 男は冷たい色を放つ扉の前に立っている。

 「空気が・・・止まった。
  炎が魔法にかき消された・・・・・・・・・。」

 目の前は鉄の扉、厚さ1m。

 男は拳を握る。骨がなる。

 そして拳を振りかぶる。



 「逃げる?・・・何から?」

 雷太は聞いた。
 この組織では秋葉が最強のはずだ。
 ヴィースが襲ってくるはずも無し、あとはゆうゆうと基地から出てワープすればいいはず・・・。

 「軍曹!それは機密事項です!!」

 兵の一人が叫んだ。
 秋葉は落ち着いて応える。

 「・・・・・・・・・・・・俺は負けたんだ。
  ・・・・・・・・・・・・敗者が勝者に情報を与えるのは当然の事・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・いかに後で罰されようが、俺は構わない。
  ・・・・・・・・・・・・お前らは『何も聞いていない』らしいがな・・・。」

 兵は黙った。
 男の覚悟を、崩すことは非常に難しい。

 「・・・・・・機密事項?なんじゃそら?」

 雷太は聞いた。当然、何も知らない。

 「・・・・・・・・・・・・ヴィース中佐から聞いていないのか?
  ・・・・・・・・・・・・今日この基地に、あの『鉄人大佐』が来る事になっている。」

 「・・・・・・『鉄人大佐』・・・・・・・・・。」

 聞いたことがある。有名だ。ジョー・ディヴィルの本にも載っている。

 「・・・そいつは・・・まずいな。」

 ヴィースが『大佐』と言いかけたのは秋葉ではなく、そいつの事だったのだ。

 詳しくは知らない。だが大佐。強いことは間違いない。

 「・・・・・・・・・・・・さっさとぶっ壊してどこへでも行っちまえ・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・こっちは全員ここにいるから鉄壁動かせねーんだよ・・・。
  ・・・・・・・・・・・・ヴィース中佐は無線もってねえしな。」

 「ああ、魔力もたまった。遠慮なくぶっ壊させてもらうぜ。」

 雷太は扉を見据え構えた。



 一方、ヴィースは、ようやく鉄壁の開け方が分かったらしい。

 「まさかスイッチではなくコードとは・・・。
  予想外で遅くなりましたが、雷太さん、今開けますよ。」

 ヴィースはコードを入力する。

 「・・・11153・・・入力・・・!」

 鉄壁が静かに、誰も気付かないほどゆっくりに上昇し始める。



 雷太は拳を振りかぶる。

 「炎魔法『火火炎破――――――



 ドゴォオン!!!



 「・・・・・・・・・え?」