一方大広間、秋葉は倒れ、雷太は立っている。

 「回復魔法『外傷小治癒(ヒール(heal))』。」

 雷太の体が少々光り、同時に傷ややけどが次第に治っていく。

 「・・・・・・・・・・・・ちっ・・・。そんなもんまで使えんのかよ・・・・・・。」

 兵に起こされ、肩を貸された秋葉が吐き捨てるように言った。
 ヴィースに怒鳴られた兵達が、到着したらしい。
 兵の統率が元に戻っていく。

 「ああ、当然。俺は第一級魔導士だぜ。
  卑怯だって言われるから、余り戦闘中は使わないがな。」

 「・・・・・・・・・・・・それでも、滅茶苦茶だがな・・・・・・。」

 「能力者に言われたくねえよ。ほいほい謎の力使えるくせして。」

 雷太の言葉に、秋葉はため息をついた。
 兵に言って下ろしてもらい、その場にあぐらをかく。

 「ところで、お前『大佐』じゃねえのか?ヴィースに聞いたんだけど。」

 雷太は言った。

 《・・・・・・・・・あほめ・・・・・・。》

 ヴィースが雷太に協力したのはIFP規約に違反する。
 ばれたら少なくとも懲罰ものだ。・・・・・・・・・あほだなお前は・・・。

 「・・・・・・・・・・・・ヴィース中佐か・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・そういえばお前と同じ『ブラックメン』だったな。
  ・・・・・・・・・・・・報告はしないでおこう。・・・・・・・・・・・・あの人は嫌いじゃない・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・俺は軍曹だ。
  ・・・・・・・・・・・・大佐なんて実力じゃねえよ・・・。」

 秋葉は目をそらしていった。

 「・・・・・・そうか・・・。
  まあ、俺はさっさと出て行かせてもらうぜ。
  お前らももう挑んでこないだろ?」

 兵は統率は取れているが、襲ってくる気配は無い。
 全員合わせたよりも強い秋葉がやられたのを見て、戦意が消えかかっているようだ。

 確認すると雷太は魔力をためはじめた。
 厚さ1mの鉄板をぶっ壊す魔法を放つ。
 並みの魔法使いには何年使っても出来ないが、雷太は並ではない。

 《・・・生意気なあほめ。》

 「・・・・・・・・・。(うるさいな・・・。しばらく静かだったのに・・・。)」

 雷太がそう思っていると、秋葉がぽつりとつぶやいた。



 「・・・・・・・・・・・・逃げろ・・・・・・。」