ここは例の鉄壁の機械操作室。
 実は2階にあり、大広間をガラス越しに見下ろせるという、
 雷太に非常に近い場所に位置している。

 その部屋の椅子に座り、さっきまで戦況を嬉々として見ていた兵達。
 今は開いた口がふさがらない状態だ。

 「・・・・・・秋葉軍曹が・・・・・・・・・負けた・・・?」
 「あの人の実力は折り紙付きだろ・・・・・・?馬鹿な・・・。」
 「・・・・・・あの『秋葉中将』の弟殿だぜ・・・・・・・・・?」
 「だが・・・・・・・・・・・・。」

 兵達が口々につぶやく中扉が開き、ヴィースが入ってきた。

 「君達!戦況はどうなっている?」

 兵達は驚くとともに慌てて敬礼し、その中の1名が答えた。

 「秋葉軍曹が・・・・・・・・・負けました・・・。」

 「何だって!??」

 ヴィースはガラス越しに大広間を見下ろした。
 部屋の中央に倒れた秋葉、それに雷太もいる。

 もちろんこれは彼の芝居だ。
 戦闘中、彼は隠れてこっそり見ていた。
 雷太が勝ったので、急いでこの部屋に来たのだ。

 「馬鹿な・・・・・・・・・。」

 しかし、上官がやられたというのに兵は一人も動かない。
 ・・・・・・・・・・・・これは・・・。

 ヴィースは口を開いた。

 「・・・君達、今すぐ秋葉軍曹の救護に向かってくれ・・・。」

 「・・・え!?」

 兵たちはざわめいた。自分達は救護兵ではない。
 治される事しか出来ないし、医療器具には触ったことすらない。

 「軍曹がやられたショックで、兵一人、医療班ですら動かない。
  皆で言って、呼びかけをし、仲間を動かして欲しいんだ。」

 「・・・し、しかし。我々は鉄壁を操作する者。
  それに皆で行く必要は・・・・・・・・。」

 「鉄壁なら僕にも操作できる。任せてくれ。
  それに、一人より大勢の方が良い。影響が違う。
  秋葉軍曹は命に別状がなさそうとはいえ、安心とも言いがたい。
  ・・・・・・・・・・・・・・・頼む・・・。僕も、すぐに救援に向かおう。」

 兵達は静まり動かない。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 ヴィースは机を激しく叩いた。

 「早くしろ!中佐命令だ!・・・人の命が懸かっているんだぞ!!」

 「は、はい!!」

 兵達は敬礼も忘れ、慌てて出ていった。
 残ったのはヴィースだけとなる。

 「・・・ふう、やっぱり怒るふりも性に合わないな・・・・・・。
  雷太さんが勝ってくれてよかった・・・。
  自組織の副総長を疑ってはいないけど、
  秋葉さんは本来軍曹より上の実力を持ってるからね。」

 ヴィースは、鉄壁の昇降装置に目を向けた。