火蛇蜥蜴は消えた。
 操作系なので、本体が他のことに気を取られると滅茶苦茶になるのだ。

 「・・・貴様・・・!・・・何をした!??」

 秋葉は冷静さを全く欠いた様子で、雷太に激しく問う。
 先程とはうって変わり、今度は秋葉がひざをついている。

 「・・・俺には炎は効かないはず・・・!・・・何だその魔法は・・・!?」

 「・・・俺も知らねえよ・・・・・・。」

 雷太は冷静に答えた。

 「ただ、『ヤイバ』は特別なんだ。
  炎なのに炎じゃない・・・。なんて言ったらいいか分からないけどな・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 ・・・『ヤイバ』・・・。
 ・・・いつか『ジョー・ディヴィル』の本で読んだことがある・・・。
 ・・・確か、この世で一人しか使えない謎の魔法・・・。
 ・・・魔法には興味が無いので読み飛ばしたが、まさかこいつが・・・・・・。

 「・・・あなどったか・・・・・・。」

 秋葉は立ち上がった。

 その秋葉に、雷太は一歩距離を詰める。

 「そろそろ決着をつけようぜ・・・。お互いにそろそろ厳しいはずだ。
  それに俺も、『準備完了』だしな。」

 「・・・準備・・・・・・完了・・・?」

 どうやら、何かを相手はしていたらしい。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 秋葉は答えずに、全ての紙を取り出した。
 一気に火がつき、1匹の巨大な火蛇蜥蜴が現れる。

 「・・・お前が何をしていたのかは、俺は知らない・・・・・・。
  ・・・ただ、俺は全てを燃やすだけ・・・。」

 雷太はゆっくりと目の前に手をかざした。
 先程の『水流放射』の姿勢に似ている。

 「俺は負けるわけにはいかないんだ。
  そうじゃないと、『あの人』には決して追いつけない・・・。」

 ・・・二人の間にしばしの静寂が訪れる。
 聞こえるのはわずかな兵のざわめき、そして炎が猛る音だけ――――――



 ――――――静寂――――――



 二人は同時に動いた。