一方その頃、雷太はまた別の部屋に隠れていた。

 こうして姿を隠し追ってくる兵を散らし散らし逃げねば、いずれは身がもたない。

 と、そこへ携帯のバイブが作動した。

 自分にしては珍しくバイブにしていたことに喜ぶも、
 クロからの着信と分かり、青くなる。

 「・・・・・・は、・・・はい・・・。」

 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

 「・・・・・・・・・・・・あの・・・。」

 『・・・・・・貴様・・・・・・。』

 電話の向こうで、鯉口を切った音がした。

 「ご、ごめんなさいっ!!!」

 『・・・・・・・・・・・・とりあえず、生きて帰って来い。
  たっぷりと斬っ・・・・・・しぼってやる。』

 「は、はい!(今絶対『斬る』って言おうとしたぞ!!)」

 携帯は切られた。
 短い会話だが、これほど怖いものもない。

 「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 雷太は再び部屋を出、逃げ出した。



 ヴィースの携帯に、着信が入った。

 『俺だ。雷太にかけた。』

 「はい。」

 『話したのはわずかだ。一応牽制はしておいた。』

 「はい。(・・・凄い牽制だったんだろうなあ・・・・・・。(汗))」

 クロはさらに声を落とす。

 『余り言いたくない話だが・・・・・・。今回の件、下手をすると・・・・・・。』

 ヴィースははっとして自分も声を落とした。
 やはりクロさんは気付いていたのだ。

 「ええ、IFPの僕なら良く分かります。
  下手をすると、非常にまずいですね。」

 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・頼むぞ。』

 ヴィースは限りなく落ち着いて言った。

 「全力を・・・・・・尽くしますよ。」

 二人は同時に携帯を切った。