第26話 “鉄壁と秋葉”


 「秋葉さん!!!」

 激しい声とともに、部屋の扉が開かれた。

 先程の、『目に濃いくまがある、手紙を燃やした男』の部屋だ。

 兵は相当慌てているらしく、この部屋では声を落とす事も忘れている。

 ――――――が、

 「・・・い・・・・・・いない?」

 秋葉という上官はいない。
 机の上に燃えかすが多少あるだけで、人の気配が無い。

 「・・・・・・!・・・・・・・・・羽織が・・・。」

 常に着ることを面倒臭がり、ほとんど袖も通さず壁にかけられていた、

 羽織が・・・・・・消えている。



 ―――――― 一方その頃。



 雷太は隙を見て部屋を飛び出し、全速力で駆け出した。

 それを見た兵が仲間を呼び、一斉に追いかけ、または道を塞いでくる。

 肉体強化などの魔法を使えばいいものを、
 慌てているおかげでそれも忘れているようだ。

 《こいつ本当に第一級魔導士か?》

 名目上はそうなっている。しかもリーダーだ。

 一方、ヴィースは兵に指示しながらも携帯でクロと声を落として話している。

 会話さえ聞かなければ、誰もが上層部、もしくは他の兵と連絡を取っていると思うだろう。

 IFP基地内にいるときの自組織との連絡は禁じられているからだ。

 「・・・・・・・・・今のところはこういう状況です。」

 携帯の向こうから、呆れながらも、いらいらした返事が返ってくる。

 『例の『鉄人大佐』の件は、あいつは知っているのか?』

 ヴィースは、場違いながらもほっとした。
 驚かれると面倒だが、相手が知っているとなると話は早い。

 「あれは機密情報ですからね。雷太さんはまだ知りません。
  話しても、無駄に混乱するだけだと思いまして。」

 『よし、その方がいい。
  とりあえず、俺は雷太と連絡する。またかけなおす。』

 ヴィースが返事をした後、携帯は切られた。

 「・・・・・・クロさん・・・怖いなあ・・・・・・。
  でも、雷太さんはまだ分かっていない。
  下手するとこれが、『とんでもないきっかけ』になるかもしれないことに・・・・・・。」