当然デュークは心を読む力などないので、そのまま話を続ける。

 「で、D・Jは雷ぷ〜を案内してくれたとして、健ちゃんは何の用?」

 健は笑顔で紙を差し出した。

 「今月の家計簿のコピーです。」

 「げっ!!お前マジでつけてたのか!!?」

 「うわ〜、そりゃまたいらないなぁ・・・。」

 D・Jとデュークは引く。

 「お客様の前なのであまり言いませんが、啓太さん以外皆さんお金使いすぎです。自重して下さい。」

 「は〜い。」

 「はいはい。」

 緑髪の二人はそれぞれ返事をする。

 《どっちが誰か、分かるかな?》

 雷太はこっそりD・Jに聞いた。

 「D・Jさん、ここってそんなにお金に困ってるの?」

 D・Jは健を横目で見ながら小声で返す。

 「いーや、健さんがお金にがめついだけさ。」

 「何か言いましたか?」

 健は振り向かずに、既に聞こえたという声で言った。

 「い、いえ!!なんでもないです!!」

 デュークが続ける。

 「あらら・・・・・・・・・、啓太は?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・食事。」

 どうやら彼は、誰にも彼にも無愛想な性分らしい。

 「へぇ〜、ありがとう。
  ・・・・・・それにしてもしゃべるなんて、今日の啓太は機嫌がいいねぇ〜。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 「・・・・・・!?(あ、・・・あれでいいのか!???)」

 雷太は心の中で驚愕した。

 と、デュークが雷太に向き直った。

 「そういえば雷ぷ〜、何かクロから手紙とか預かってないかな?」

 「あ!あります。それと『合言葉』も。」

 「?合言葉?それは聞いてないよ?」

 デュークは手紙を受け取りながら聞いた。

 「いやなんでも疑われた時に言えとか・・・。・・・分け分かんない言葉なんですけど・・・・・・。」

 「・・・・・・・・・?」

 「なんでも、・・・・・・『JYCD→0=PEACE(ジッド・ゼロ・ピース)』だとか・・・・・・。」

 「!!!!!!!!」

 デュークの目が大きく見開かれた。
 くだけはしないものの、膝が震える。
 健の支えの申し出を断って皆に背を向け、手紙を光にすかすように持ち上をみる。



 水が伝う。



 「・・・・・・?」

 雷太を含め、デューク以外の全員その意味が分からない。
 しかし、一人の人間を泣かせる力を持つ言葉のようだ。

 彼は皆に向き直った。

 「やあ、なんでもないよ。ちょっと疲れてるだけさ。
  ・・・・・・手紙読むね〜。」

 いつもと変わらぬ明るい声だ。

 雷太は、追及するのを止めた。
 隠す者に追求するのは、鬼の所業だ。
 他の者も同じらしい。