「・・・・・・・・・と、いうわけだ。・・・どう思う?」
クロは煙草を吸いながら携帯に話しかけた。
携帯の向こうからは、いつもの軽口ではなく、トーンは変わらずとも真面目な答えが返ってくる。
『もの凄くまずいね。』
「・・・・・・・・・お前、いまどこだ?」
クロは聞いた。
『もう言われた事は済ませたからね、家に帰ってるよ。』
ヴァンが言う『家』とは組織のことだ。
これでも彼は『ブラックメン』ではなく、『メタルガーディアンズ』という組織のリーダー。
クロとは友人で恩義がある為、度々協力してくれているに過ぎない。
本来は別の組織、『敵同士』の分類だ。
まあ、彼が敵になるとは考えがたいが・・・・・・。
「そうか、なら会うことはないな。」
クロは少々安心すると共に続ける。
「お前、あの『鉄人』に勝てるか?」
しばらく無言のうち、返答が帰ってきた。
『可能性はあるけど、分かりづらいよ。
『鉄人』は相当の『格闘家』と聞くけど、他の組織と同じく情報自体が少ない・・・・・・。
僕と同じ格闘家だからあとは実力次第だ。僕は『格闘王』の一人だから負ける気はないけど・・・。
『鉄人』は過去に『元・格闘王』の一人を逮捕した事があるほどの強者らしいし。』
『鉄人』は相当に強い格闘家らしい。
「・・・・・・格闘家同士じゃ相性もへったくれもないか・・・・・・・・・、となると。」
ヴァンにもクロが言いたい事が伝わったらしい。
『そう、新(太朗)は同じ格闘家だから問題外。
だから僕達で相性が良く勝てるとなると・・・・・・。』
多少の沈黙の後――――――
「・・・・・・雷太だ。」
『・・・・・・雷ぷ〜だね。』
――――――二人は同時に言った。
『『鉄人』の事は連絡してるの?」』
「していない。してもどうにもならないだろう。・・・混乱させるだけだ。」
『それもそうだね。』
ヴァンは続ける。
『でも、そんなに心配する事かな?
チャンポンチャンとナレクトは余りにも離れすぎてる。
ほぼ100%会うことはないよ。』
「・・・・・・それはそうなんだが・・・。」
『・・・?』
「・・・何か、嫌な予感がしてな・・・・・・。俺の勘は当たるんだ。」
『・・・・・・・・・・・・。』
やがて、二人は通話を終えた。
クロは再び書類にペンを走らせる。
少々後、その手が一瞬止まった。
「確かに、剣士、格闘家両方に相性が良い魔法使いなら勝てる可能性はある・・・。
・・・・・・・・・・・・残る問題は・・・・・・『鉄人』の『能力』が一切不明な事だ・・・・・・。」