―――――― 場は変わりジェライス山の山頂。



 雷太は歩いていた。

 「まだ着かないのかよ・・・。ここ本当に山頂か?」

 《雷太の歩幅は3cm、移動速度は秒速1mです。》

 「俺はハムスターか!?ここ本当に広いんだぞ!
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

 雷太の目の前に妙な白線が現れた。
 その白線の向こう側には雪など一切降っておらず、薄緑の草原が広がっている。
 どうやら、何かの境界線のようだ。

 「この線って・・・・・・・・・?
  ・・・・・・・・・なんで向こう側雪ねーんだ?」

 雷太は、恐る恐るゆっくりと白線を踏み越えた。・・・・・・すると・・・。

 「・・・・・・ん?なんだ・・・・・・あったかい・・・。この線の中あったかいぞ!!
  え〜と気温は・・・・・・・・・24℃!?・・・やった、もう魔法いらねーや。」

 雷太は魔法を解除した。
 どうやら、この白線の中はある意味世界が違うらしい。
 デュークは科学者らしいが、これも科学の力なのだろうか?

 《・・・・・・流石に、それは凄すぎないか・・・?》

 「だよな・・・。まあ、とにかく行こう。たぶんそろそろのはずだ。」

 雷太は再び歩き出した。



 ―――――― 少したって。



 雷太は気候がいいので機嫌よく、鼻歌まで歌っている。

 《ちなみに歌っているのは『しらけ鳥音頭』です。》

 「・・・・・・・・・・・・・ん?」

 雷太は歩みを止めた。
 前方から誰かが、草原を歩いてくる。

 「・・・・・・・・・。(誰だ?)」

 視力のいい雷太でも、これだけ離れていては見えない。
 身構えまではしないものの、用心しとりあえず魔力をねる。

 やがて、そのものは雷太の目の前まで来ると止まった。
 2mぐらいしか離れていないので、今度は余裕で顔がはっきりと見える。

 相手の体格は良く身長も高い。
 アーミー柄の服を着、緑髪。
 鼻の頭から両頬にかけて大きな一文字の傷がある。斬り傷のようだ。

 「やあ、こんにちは。」

 緑髪のものは、微笑して挨拶した。