―――――― 一方その頃。



 相変わらず、クロとギンは話し中だ。

 「・・・・・・・・・馬鹿な・・・・・・『大佐』だと!??」

 クロは思わず机を平手で叩き立ち上がった。

 「そうや・・・・・・。通称『鉄人』。あの『IFP空軍部大佐』が動いたんや。」

 クロはとりあえず座った。煙草を手に取るがくわえるだけで火をつけない。珍しく動揺している。

 「あの『正義の塊』か・・・。迷惑な事だな・・・。」

 「せやな。わいら情報屋も大変なんやで、動きにくくてかなわんわ。」

 クロは煙草に火をつけた。深く吸う。

 「・・・・・・・・・・・・。行動内容は何だ?」

 「ん〜、まあようわからんけど、各基地の見回りらしいで。・・・・・・組織の直接討伐とかやないみたいやな。
  情報によると、今日はチャンポンチャン大陸の『IFP空軍部第5支部基地』に向かうらしいわ。
  やからたぶん会わへんとは思うけど・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・もし会ったら大変な事になるで・・・。
  やから一応忠告がてらに電話したんや。」

 実際、これは大問題だ。
 これまで各組織と同じように殆ど個人や警察単位で動いていたIFPが、突然組織で動き出した。
 しかも、動いたのはいきなり大物だ。

 「そうか・・・・・・・・・・・・。」

 ギンは一拍置いて静かに聴いた。

 「一つ聞くわ。・・・・・・あんさんが今日使いに出した組織のメンバーの中で、
  もし、あいつ・・・『鉄人』に会ってしまって戦った場合・・・・・・。
  勝てるのはおるんか?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 クロは長く黙り考えた。

 ギンは静かに待つ。

 クロの頭には雷太、新太郎、ヴァンの顔が浮かぶ。

 「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 やがて、ギンは言った。

 「あかん質問やったみたいやな、すまん。情報は以上や。
  じゃあ、切るで。会わへんといいな。」

 「・・・・・・・・・ああ。」

 クロは携帯を切った。
 新たな煙草に火を付け、書類を再び書き始める。
 少したってその手が止まった。

 「・・・・・・いるか・・・?」

 彼は静かにつぶやいた。

 今の状況では決して会うことは無い。
 しかし、もし会えば終わりだ。