「甘いな、これが格闘王の拳か?
  笑わせるな!」

 「ぐっ・・・!」

 ヴァンはアルハザードの白衣の中から出た右拳で吹っ飛ばされた。
 彼は受身を取るものの、衝撃で部屋の扉が壁ごと壊れる。

 「「ヴァンさん!?」」

 雷太にも新太郎にもヴァンの拳は見えなかった、
 そしてヴァンを有無を言わさず吹っ飛ばす拳。

 アルハザードは相当の格闘家でもあるらしい。

 「私が気に入らないか?気になるか?ヴァン・ヴェルト。
  ならば追うが良い、戦い続けるが良い。
  どの道『真の世界の統轄者(ラ・レイン・ルーラー)』を目指せば私とぶつかる。
  また会おう、氷上=P・クロ、ヴァン・ヴェルト、龍 雷太、乾 新太郎、鬼山 海里。」

 そう言うとアルハザードの体は自然と透け、消えていった。

 「次会う時は、互いの世界を掛けてか、面白いじゃねえか。」

 そういうクロの言葉に恐らく笑みを浮かべながら。

 一瞬静寂が落ちる。

 が、拍手の音が小さく響いた。

 「中々面白かったじゃあないか。」

 「シド・ヴェイン・・・。」

 一言も発さずただ傍観していた男が穏やかに微笑う。

 「さて、私も行くとするかね。」

 シド・ヴェインは立ち上がった。

 今度は皆構える、クロも鯉口を切っている。

 「逃げるのか?」

 「ああ、尻尾を巻いてね。」