雷太がそう思っていると、金髪の男の後ろ―――雷太の目の前―――に、また人が現れた。・・・・・・女性だ。

 「・・・・・・・・・・・・。」

 きれいな銀髪に魔法使いが好んで被るとんがり帽子を、
 先をひしゃげさせた状態で被り黒いローブを着て、木でできた杖を持っている。

 「・・・・・・!」

 雷太は、その顔に見覚えがあった。

 「・・・お前、『シーバス』か?」

 「・・・ええ、お久し振りです。」

 女性は落ち着いた声で答えた。

 「って事はこの鼻水まみれの男・・・・・・まさか、『ウォルフ』か!?」

 男は顔を上げた。

 「雷太さぁ〜ん、会いたかったスよ〜。」

 「うわっ!頬ずりすんな!無精ひげが痛え!」

 「・・・・・・・・・・・・。」



 彼の名は『ウォルフ・ハイドレート』。
 雷太より少し背が高く年は24歳。
 髪は金髪で雷太よりやや筋骨たくましく見える。
 『魔法都市』出身の魔導士で、これでもなんと世界に10名しかいない、『第一級魔導士』の1人だ。
 得意魔法は水魔法。



 「うう〜〜〜〜。」

 「鼻水つけんな!ってか泣くな!」

 「・・・・・・・・・・・・。」

 ちなみにさっきからの「・・・・・・・・・・・・。」はシーバスだ。彼女は落ち着いていて、必要以外あまり話さない。

 「雷太さぁ〜ん。」

 「『雷太さぁ〜ん』じゃねえ!お前俺より年上だろうが!」

 考えてもみてほしい。
 突然抱きつかれたうえ、涙と鼻水まみれの顔をくっつけられ頬ずりされているのだ。
 ・・・・・・・・・年上の男に。

 《・・・・・・・・・引くな。》

 ・・・・・・・・・ああ、引くよ。