エクセスの端、人通りの少ない道。
そこに一つの屋台があった。
屋台看板にはただ一つ、『牛』と書いてある。
常連にしか分からない仕様らしい。
そこのカウンターに波切夫妻はいた。
「然し今日は早いな。
ほれ御通しだ。」
「今日は小用があってな。
直ぐ出るが、冷や2本と大根の煮付けをくれ。」
「是。
飛鳥殿も久し振りだな。」
「御久し振りです。」
彼女は静かに微笑んだ。
彼女の名は『飛鳥 弥生』。
一番隊副隊長であり、また波切の妻でもある女だ。
専業主婦をしておりその為か余り組織の会合に出た事はない。
昔は波切と色々あったらしいが・・・・・・?
親仁は冷酒を日本二人に差し出した。
「ほれ、大根はちょっと待ってな。」
「噫。」
「分かりました。」
二人は静かに酒を飲み始めた。
一方親仁は大根を厚めの輪切りにし丁寧に皮を剥いた。
それを、鰹と昆布を長時間煮込んだ良い色と香りのする出汁の中へそっと入れる。
やがて大根がぐつぐつと煮え、味が染み込んで来ると親仁は竹串で大根へ数箇所穴を空けた。
こうすると更に出汁が中にまで染み渡るのである。
そして煮上がった大根をさっと取り出して波切夫妻の好む四つ切りにし、先程の出汁をたっぷりと掛け回した。
仕上げに上等の葱をぱっぱっと掛け、柚子胡椒を少量添え出来上がりである。
「ほれ、出来たぞ。」
美味そうな煮大根が二皿置かれる。