殺し、殺人、殺し、惨殺、撲殺、殺し、殺す。

 既に彼は裏の業界でも有名になっていた。

 あくまで彼が請け負うのは組織に関係の無い一般人。

 成功率は極めて高く、また額も非常に安かった。

 彼は金に等疾うに興味を失くしていた。

 ただに警護や用心棒を雇う者もいたが、

 炎の渦を自在に操る彼の敵ではなかった。

 だがある日とんでもない事態が彼を襲った。

 彼はある格闘家に負けた。

 自分と同じ特殊能力を使う不思議な男で、
 正に気迫と覚悟に押され偶然でない大負けだった。

 彼はショックを受けると共に信用を失くし、仕事が来なくなった。

 其処で少々危険な殺しを請け負った矢先、彼に出会った。

 「何奴!?」

 「金で雇われたしがない用心棒だ。
  悪いがお前は斬らせてもらう。」

 「・・・・・・・・・良かろう、掛かって来るが良い!
  我が名はバルロクス・ヴェルフレイム!!
  いざ尋常に・・・・・・勝負!!」

 「・・・・・・・・・お前中々面白いな。
  俺の名は氷上=P・クロ。
  ・・・・・・・・・・・・・・・勝負だ。」

 結果は言わずもがな。

 クロに斬られたバルロクスは処刑を恐れて逃げ出し、行方不明となった。

 「はあ・・・はあ・・・!」

 荒い息を吐きながら彼は山を登っていた。

 彼は捕まるのが怖かった、見えない背中が怖かった、何よりも処刑が怖かった。

 あれだけ人を殺したのに、自分が死ぬのは怖かった。

 やがて夜、完全な闇となり彼は木陰に隠れた。

 血が止まらない・・・、此のままでは・・・・・・。

 彼は焦っていた。

 「・・・・・・・・・!」

 彼ははっとした。

 人の話し声、如何やら一組の男女の様だ。

 此方に近づいてくる・・・・・・、まずい・・・まずいまずいまずい・・・。

 彼は巨斧を構えた。

 上手くいけば二人共殺れる。

 彼にもう迷いは無かった。

 「不意打ち・・・許されよ!
  ・・・・・・ぬうん!!」

 バルロクスは両腕で巨斧を力任せに振り下ろした。

 「!?」

 撃音がしなかった。
 巨斧が指一本で止められていた。

 「ああ、いたいた。」

 「・・・・・・・・・・・・本当ね・・・。」

 「なっ・・・!?」

 所有者の手を離れた巨斧が地に音を立てて落ちる。

 目の前に顔の整った何か異様な雰囲気の男と、
 まるで月の光の様な色の髪と共に非常に美しく淡い光を纏った女が立っていた。

 「やあ、初めましてバルロクス・ヴェルフレイム。」

 「貴殿等は一体・・・・・・。」

 「小生の名は太郎、彼女の名は輝夜姫。
  行き成りで何だけど、貴君我が組織に入らないかい?」

 「・・・・・・・・・・・・え・・・?」





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