其れから4日後。
 2つの殺しを終えた彼は、村へ急いでいた。

 何か嫌な予感がする、唯其れだけだった。

 燃えていた。

 家が闇の中で爛々と輝き燃えていた。

 彼は叫んで家の中へ飛び込んだ。

 彼は当然炎等平気だった。
 しかし女性はそうはいかない。

 フルバトルフレイムの特殊能力を持つのは男性のみ、女性で持つのは異端だった。

 彼は家の中から黒焦げの母と、大火傷を負った妹を引きずり出した。

 既に二人共に死んでいた。

 静かに囲む村人。

 彼等は約束を守る気等無かった。

 突然家に押し入り彼女等に暴行を加えた。

 暴虐の限りを尽くし、健否問わず辱め、
 火を放つ前にはバルロクスがやった事全てを言い放った。

 二人はバルロクスへの呪いの言葉を力の限り吐きながら逝った。

 囲む村人達は力無く地に膝着く彼にそう囁いた。

 長老自ら斧を持ち、構えた。

 一族を穢す屑共に死を。

 そう唱えながら斧をバルロクスの脳天へと振り下ろした。

 長老の顔が真っ二つになった。

 バルロクス・ヴェルフレイム。
 彼は壊れた。

 一時的かもしれない、もしかしたら死ぬまでだったかもしれない。

 彼は巨斧を猛り振り回し、目の前の肉を次々と断った。

 暫く後、目に見えて動く生物は彼のみとなっていた。

 巨斧は血に塗れ、辺りは紅色しかなかった。

 彼は泣いていた。

 炎殺鬼牛バルロクス・ヴェルフレイムの誕生であった。



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