思ったよりも簡単だった。
標的は人間一般市民。
ちょっと叩いただけで首が捻じ曲がってしまった。
不快な音と感触の後、急いで場を去った。
叫び声が聞こえた・・・・・・・・・気がした。
酒が不味かった。
こんなに不味い酒を飲んだのは初めてだ。
多分、己の心の問題なのだろう。
そう理解して一気に煽った。
こっそり薬を買って来た彼を最初は二人とも訝しんだが、
彼が必死で考えていた言い訳と取り繕った笑顔でもう何も聞かなくなった。
少しずつ、母が回復していくのが見える気がした。
あと少しで漸く終わる。
そう思っていた矢先彼は長老の家に呼ばれた。
全てばれていた。
如何いう経緯なのかは知らない。
只長老始め年配の大人達には情報が行き渡っていた。
バルロクスは早急に村を出て行く事を促された。
其れが掟を血と罪で染め上げた者への、最大限有情な措置だった。
彼は母の病状が思わしくない為あと一週だけ待って欲しいと頼み込んだ。
あと2回の殺しで金が貯まる。
そうすれば早々と出て行けば良い。
何より母と妹に此の穢れた事実を知って欲しくなかった。
罵倒を受け、殴られ、唾を吐き掛けられ其れでも頼み込んだ。
やがてぼろぼろとなっても言を曲げない彼に到頭根負けしたのか、
長老の口から許しの言葉が出た。
彼は家を蹴り出され、ふら付きながら帰宅した。
母と妹には、暴漢にあって其の対策の会議だったと言い繕った。
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