「『ジョー・ディヴィルの本』?」

 雷太はまた聞き返した。

 「ああ。」

 「・・・・・・当然だ。ってか持っていないやつがこの世にいるのか?」

 「・・・・・・・・・まあ、それはそうだな。」



 『ジョー・ディヴィル』。
 確かに、彼には誰も会ったことがない。
 ではなぜ、彼が存在している事が分かっているのか?
 それを証明する唯一つの物が、『ジョー・ディヴィルの本』である。
 前振りをわざわざ読んで頂いている読者様には分かるだろうが、様々な種類があり、
 全ての記述において、正しい事が明記されている。
 いつから発刊されたのかは確認されていないが、そのジャンルは
 殆ど全ての事柄を網羅しており、人々にとって教科書のような存在となっている。
 一般的なタイトル、例えば『料理』や『勉学』等の本については量産済みで何処の書店でも手に入るが、
 『高等魔法』や『暗殺術』等の危険が伴うものは、簡単には手に入らないようになっている。
 そんなこともあり、今や彼の本を持っていない者は殆どいない。
 故に、彼の名を知らないものはいないのである。



 「じゃあ、そのジョーディヴィルの本がどこから発刊されているかは知っているか?」

 「IFPだ。ジョー・ディヴィルから一方的に送ってきて、それをそのまま発刊しているらしいな。」

 「・・・・・・一般的にはそう知られているけどな、実はその間にもう一人いるんだ。」

 「えっ!?そうなの?」

 雷太は驚愕の余り、すっとんきょうな声を上げた。
 同じ魔導士として尊敬する身、彼については結構博識のつもりだったらしい。

 クロは動じず答える。

 「ああ。・・・正確には、ジョー・ディヴィルから『ある男』に原稿などの材料がが送られ、
  その男からIFPにまた送られる過程を経て、ようやく日の目を見るんだ。」

 「へぇ〜。そうだったのか。」

 「・・・・・・ああ。・・・で、今回の任務なんだが、その『ある男』をここにつれて来て欲しい。」