「『ジョー・ディヴィル』?」

 雷太は聞き返した。

 「ああ。」

 「・・・・・・当然だ。知らないほうがおかしい。」

 「・・・・・・・・・まあ、それはそうだな。」



 『ジョー・ディヴィル』。
 彼は世界最高レベルの魔導士だ。
 彼自身は公言していないが、もしかしたら世界最強の魔導士かもしれない。
 魔導士階級の中でも彼しか持たない最高の称号、『魔道の支配者』の位に在り、
 全ての魔法を極めたとされている彼は、全世界の魔導士の尊敬を集め、目標とされている。
 しかし、何とも不思議な事に、実は今まで彼に会った事のある者は誰もいないのだ。
 故に、彼の本名、年齢、容姿、居場所。全てにおいて謎なのである。
 もしかしたら、『彼』ではなく『彼女』の可能性もある。
 様々な予測がされ、探そうとする人が絶えないが、彼の手がかりすら掴めないのである。



 「・・・で、そのジョー・ディヴィルがどうした?・・・・・・まさか捜せってんじゃないだろうな?」

 クロは微笑して言う。

 「まさか。いくらなんでもそんな無茶は言わないさ。」

 「じゃあ何だ?」

 「・・・・・・・・・。もう一つ聞くが、じゃあもちろん『ジョー・ディヴィルの本』は知っているよな?」