雷太は氷雨の後に続いて、クロの家の中を歩いていた。

 「・・・・・・。(俺がクロの家で食うとなると・・・・・・やっぱりあそこか・・・?)」

 雷太が想像しているのは、いつも皆で食事する時に使用する部屋だ。

 彼がそう考えていると、だんだんその部屋が見えてきた。

 扉に付いている、部屋の名前が記してあるプレートには、こう記されている。

 『食堂No.3』

 「・・・!(あっ!やっぱりここ――――――

 ・・・・・・が、氷雨は部屋の前で突然右に曲がった。

 「えっ!?ここじゃないの!?」

 氷雨が少し目を丸くして振り返る。

 「はい。今日はいつものここじゃないそうなんです。
  ・・・・・・なんでも今日は、『食堂No.10』だそうですよ。」



 ・・・聞いた事がある・・・。
 確か、クロが大事な話を、―――食事と同時に―――する時に使用する部屋のはずだ。
 そこでは、一切の私情抜きに重要な話がされる。
 それは、1つ1つが組織の命運に関わるといわれ、その内容を他人に話す事は当然禁じられる。
 ヴァンさんが入るのは何回か見たことがあるが、俺や新太郎は入ったことが無い。



 「・・・・・・。(・・・もしかしたら、・・・・・・重要な『任務』かもしれない・・・。)」

 雷太は気を引き締めた。



 やがて、ある扉の前にたどり着いた。

 「ここです。すぐに昼食をお持ちしますので、先に入っていて下さい。」

 そう言って氷雨は去っていった。

 雷太は扉を見た。真っ黒で重量感のある扉だ。

 彼は扉を開いた。

 今度はちゃんと電気がついている。

 少し広めの部屋の真ん中にテーブルが置いてあり、それを差し向かいにして椅子が二つ置いてある。

 そのうちの1つに、クロが座っていた。

 「・・・・・・よく来たな、雷太。」

 彼は立ち上がらずに言った。