2人は大きな部屋で向かい合ってソファーに座った。
まず雷太が口を開いた。
「・・・で、何の用だこんな夜中に?ってか何だそれ?」
「ふふふ、この袋の中にはお前が泣いて喜ぶ物が入っているのだ。(にやにや)」
「・・・・・・・・・は?」
新太郎はにやけながら続ける。自らじらしている割には、早く見せたくてたまらないらしい。
「この中の者を1つでも見た時、お前は狂喜し、俺に敬語を使うようになるだろう。(にやにや)」
「・・・・・・・・・・・・はぁ?(あほかこいつは?)」
「ふふふふふふ。(にやにや)」
「・・・・・・・・・・・・・・・。(いかれたか?魔法でもかましたら正気に戻るのか?)」
「さて、・・・・・・。」
新太郎は袋の中をごそごそと探った。
「・・・・・・ん〜、まずはこんなもんかな・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(いっそのこと大魔法で頭ふっ飛ばした方が地球環境にも良いか?)」
「・・・ジャーン!どうだ!」
新太郎は袋の中から真っ白なタオルを取り出した。
真っ白な生地に、ワンポイントでこう文字が入っている。
『C・O・S』
かなりシンプルなデザインだ。
「いや、どうだ!って・・・こんなタオル・・・・・・・・・・・・ん?
・・・・・・んん!?・・・・・・・・・こ、これは!!・・・お、おい新太郎!」
新太郎はにやりと笑った。
「気付いたか?」
「こ、これ・・・・・・、『CLAIM OF SOUL』じゃねえか!!」
『CLAIM OF SOUL』(クライン・オブ・ソウル)
それは、世界で最も人気のあるバンドの名だ。
その人気ぶりは計り知れなく、結成してから今までちょうど100年間、衰える事は無い。
ここでは詳しくは書かないが、数々の記録的な現象を引き起こしている。
今書いたとおり結成より100年であり、しかもその間メンバーは一人も変わっていないため、
当然、『新々 進之真』(しんしんしんのしん)という妙な名前の男をリーダーとする計6人の男女は全員魔族である。
余りにも偉大な記録を持ち、人々の生活の一部となっているバンドなので、その存在感は一組織にも匹敵し、
新々 進之真の発言力に至っては、『魔道の支配者』ジョー・ディヴィル並みとも言われている。
ちなみに、雷太は物心がついたときから彼らが好きで、多くのライブに行き、CDはもちろん、グッズも相当持っている。
知識も半端ではない。・・・・・・つまり・・・。
《マニアだ!》
そう、むしろ超マニアといっても過言ではない。・・・・・・新太郎も同様だ。