「へぇ〜、かわいいじゃん。」

 雷太から、軽薄な言葉が飛び出した。

 「まあな。俺が言うのもなんだが、よくできた女だ。
  ただ、さっきも言った通り、落ち着きすぎているのが玉に瑕なんだがな・・・・・・。」

 ラドクリフは砂糖をもう3本追加した。

 「へぇ〜〜。・・・・・・・・・・・・ん?」

 雷太は写真の隅に何か書かれてあるのに気が付いた。女性の筆跡だ。

 「・・・ん?・・・『霜刃▽雲母』?何じゃこりゃ?」

 ちなみに『▽』はハートマークだ。

 「ああ、『雲母』(きらら)っていうのは上さんの名前だ。
  本名、『結城=キティ=雲母』(ゆうき=キティ=きらら)。・・・・・・だから『雲母』だ。」

 「ふ〜ん・・・。じゃあ、この『霜刃』ってのは?」

 「?俺に決まっているだろう。」

 「えっ!?だってお前、『ラドクリフ・ランバージャック』って名前じゃ・・・?」

 砂糖を3本入れながら彼は答える。

 「ああ、俺の本名は『ラドクリフ=霜刃=ランバージャック』だ。そういうわけだ。」

 「へぇ〜。なるほどな。」

 「大体から、初対面でしかも自分が認めていない相手に本名を教えるわけが無いだろう。」

 「・・・・・・・・・ってことは、今は認めているってことだな?」

 二人は相手をしかと見つめている。

 「そうだな・・・。そう思ってもいい。
  次出会った時が、お前が俺に捕まるときだ。」

 「・・・・・・・・・・・・。」

 空気がぴりぴりする。・・・・・・が、二人は笑っている。
 ここで争ってもお互いに何のメリットも無いことは先程確認済みだ。
 やがて二人は目をそらした。

 「・・・・・・・・・そういえば、今日は非番か?制服着てねーけど。」

 最初に口を開いたのはまたも雷太だ。

 ラドクリフが砂糖を2本追加しながら答える。

 「いや、制服とキャップは廃止になったんだ。」

 「?何でだ?」

 「・・・・・・下部から制服がダサいと訴えがあったんだ・・・。・・・俺はそうは思わないんだが・・・。
  ・・・それを上が認めちまってな・・・・・・。・・・ま、そんなわけで今はこれだ。」

 彼は横の椅子に掛けてある、白い羽織り式の上着を指し示した。

 「これを上から羽織さえすればIFPとしての活動が自由に出来る。
  隠密行動もやりやすいし、便利にはなったわけだな・・・」

 「ふ〜ん・・・・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 少しの間、沈黙が訪れた。

 その間に、ラドクリフは砂糖を22本入れた。

 「・・・あ・・・あの・・・・・・。」

 雷太はたまらず沈黙を破った。

 「・・・・・・・・・何だ?」

 「・・・さっきから一体何本砂糖入れりゃ気が済むんだ?・・・・・・ってか入れすぎだろ!」

 「悪いか?俺は甘党なんだ。」

 「いや、もはやそのレベルじゃねーよ。・・・・・・限度があるぞ・・・。」

 《だいたいからどうやってそんなに溶けたんだよ。物理的にそんなに溶けないだろ。》

 ラドクリフはユウを無視した。

 「おい、燃。」

 「!?何だ!!」

 呼ばれて、燃がテーブルへやってきた。・・・・・・・・・超速ダッシュで。
 ほこりは立たないが、客がびっくりするので止めろ。燃えすぎ。

 「・・・いつものやつを頼む。」

 「んん!!合点承知!!」

 燃はダッシュで奥へと入っていった。

 不思議に思った雷太は聞く。

 「・・・?いつもの?(ってかこいつ常連だったのか!?)」