2人は向かい合って座った。
 それぞれの前には、湯気を立てるコーヒーが置かれている。

 「・・・で、話ってなんだよ。」

 雷太が切り出した。

 「・・・この前の事だ。」

 コーヒーに砂糖を1本入れながら、ラドクリフは言った。

 「この前?」

 「ああ。・・・・・・まったく、ろくでもない魔法をかましてくれやがって・・・。」

 「ろくでもないって・・・・・・。仕方ないだろ、あの場合は。」

 「・・・とはいえな・・・・・・。お前、俺が金髪アフロになってたのを知っていただろ?」

 ラドクリフは聞きながらも砂糖をもう一本入れた。

 「・・・・・・う・・・。」

 雷太はたじろぐ。確かに、あれは見事なアフロだった。

 「あれから大変だったんだぞ。」

 「・・・・・・愚痴かよ。」

 「ああそうだ。仲間からは笑われるし、直すのに金がかかったしな・・・。
  ・・・・・・・・・中でも最悪だったのが・・・。」

 「・・・最悪が?なんだ?彼女にでも振られたか?」

 ラドクリフは砂糖をもう一本入れた。

 「いや、・・・・・・上(かみ)さんが無反応だった事だ。」

 「・・・上さん?・・・・・・!!!お前、結婚してんのか!!?」

 「?・・・そうだが・・・。・・・・・・それがどうした?」

 彼は砂糖をもう2本追加した。

 「いや、お前何歳だよ?」

 「・・・・・・?・・・19だ。」

 砂糖を2本追加しながら、彼は言った。

 「俺とタメかよっ!!早婚だな!」

 「・・・・・・いや、俺の出身の村では結婚も離婚も完全に自由だからな・・・。そう早婚でもないぞ。」

 「・・・・・・・・・・・・。あ、あの・・・、結婚何年目ですか?」

 更に砂糖を2本入れたラドクリフに雷太が聞いた。

 「・・・・・・。式を挙げたのは去年なんだが・・・・・・。
  生まれてからずっと一緒にいたからな・・・。・・・・・・正確には19年だ。」

 「・・・そ、そうか・・・・・・・・・。」

 「・・・これが写真だ。燃やすなよ。」

 「・・・燃やすかよ。」

 砂糖をまた2本入れながら、ラドクリフは写真を取り出した。
 写真には、ラドクリフと、女性が一人写っている。