流石に雷太の方がスピードは速い。

 「くっ・・・。」

 焦ったラドクリフは、走る勢いそのままに唐竹割り(刀を上から垂直に振り下ろす事)を繰り出した。

 その行動を読んでいたのか、雷太は左に移動し間一髪でかわす。

 オレンジ色の髪が1、2本地面にはらりと落ちた。

 「しまっ・・・!!」

 思わずそう叫んだラドクリフの目の前には、開かれた雷太の右手が既に突きつけられている。

 「くらえっ!」

 雷太の右手に魔力が集まる。



 ――――――魔法とは・・・・・・。
 どんな生物でも必ず体内にある様々なエネルギーを、『魔力』と呼ばれる全く別の力に変換し、
 その『魔力』を、使用したい魔法の名を呼ぶことによって更に変換することで、様々な力を使用できるというものである。
 と、言ってもそれが出来る者はそうなかなかいない。
 魔法が使えるものの事を魔法使いと呼ぶのではあるが、魔法使いの数を世界の人口に比べると圧倒的に少ないのが現状である。



 「炎魔法『ヤイバ』!」



 ボゥ!



 雷太の右手から直径30cm程の火の固まりが飛び出し、ラドクリフの顔を直撃した。

 「・・・・・・がっ・・・!!」

 火は小さく、しかももう消えたが、人間の体は頭部に突然熱が加わると意識を失うようになっている。

 ラドクリフは仰向けに倒れた。手を離れた刀が地面で金属的な音を立てる。

 「・・・ふう・・・勝った。」