実は、世界を狙う組織といってもそう人々に嫌われているわけでもないのだ。
むしろ好かれていると言った方が正しいだろう。
確かにこの世界を奪ろうと争い続けている組織達だが、
一応プライドというものはあるらしく、メンバーは組織や自分の敵以外には全く手を出さない。
むしろ、自分達が拠点とする所の人々と気さくに話したり、普通に公的なものを利用したりと一般民間人と殆ど何も変わらない。
そのくせ、腐っても組織なので、経済効果や犯罪抑止力はある。
また、理由は様々だが、組織の幹部達を英雄(ヒーロー)などと尊敬する者もいる。
今の時代、組織=悪ではなく、もはや組織=正義と言っても過言ではないのだ。
また、エクセスの住民達は、雷太が魔法使いという事は百も承知なので、大抵のことでは驚かない。
先程驚いていたのは、3年ぶりだからである。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます〜。」
「・・・しっかし、この街も変わらないなあ。3年たっても・・・・・・。・・・・・・さて、そろそろ――――――
ピ――――――――!!
突然、警笛のような音が鳴り響いた。(雷太が言ったのではない。)
「ん!?(うるさいなー。)何だ?・・・・・・ってゲゲッ!あれはっ・・・!」
「そこの組織『ブラックメン』所属者龍 雷太!おとなしくお縄につけ!!」
そんな古くさいセリフをいい、雷太に向かってくるのは2人組の男だ。
2人共上は白、下は黒の制服を着て頭に白いキャップを被っており、そのキャップには正面に『IFP』と書かれている。
「・・・・・・うわ・・・、何てこった、『IFP(帝国正警察)』じゃねえか!!・・・面倒なやつらに見つかっちまった・・・・・・・・・。」
どうやら、彼らは雷太の敵らしい。
雷太は周囲を見回した。
「・・・・・・。(くそ・・・、隠れる場所はねえし、魔法なんて使おうものなら周りの人を巻き込んじまう・・・!)・・・・・・・・・。」
そう考えている間にも『IFP』の2人組は雷太に迫ってくる。
「・・・・・・仕方ない・・・逃げろっ!」
雷太は逃げ出した。
前述で書いたように確かに昔『世界帝国』は滅びた。
しかし、完全に滅びたわけではない。
『世界帝国』が完全に滅びることで世界の治世や法律が乱れ、
無駄な面倒事が発生することを恐れた各々の組織たちは全ての機関を潰し、『世界帝国』の発言力や行動力のみを奪ったのだ。
これが史実の『世界帝国崩壊』である。
そして力を失った帝国は現在『世界政府』と名を変え、現在も在るのである。
ただ、実際にはある一つの機関だけは今も滅びずに残っているのだ。
それこそが『IFP(帝国正警察)』である。
この警察とは名ばかりの軍隊は、力を失った政府が止めるのも聞かず、『組織の完全壊滅』を謳っている。
その力は強大な組織にも匹敵し(それ故にこの機関のみ滅びなかったのだが。)、今も日々活動し各組織を潰している。
『組織を潰して世界に平和を!』
が彼らのスローガンなので、組織たちにとってはやっかいな事この上ない。
民衆にとっても同じで、英雄と警察、どちらを応援すればいいのか分からない。
現在では『IFP』=組織と思っている人が少なくないのが現状だ。
