ここはジパング大陸、『陽気な街:エクセス』の大通り、『メリーストリート』だ。
大通りと言うだけはあってかなり大きく、左右には店が立ち並び、平・祝日を問わず常ににぎわっている。
ちなみに歩行者天国だ。
今日も大勢の人であふれている。
・・・そのとき、
シュッ・・・
突然、通りのど真ん中に雷太が現れた。
周囲の人々の動きが止まる。
「・・・!・・・・・・げ・・・。」
雷太は思わず声が出た。よりによってこんなところに出るとは、彼も思っていなかったらしい。
皆、ぽかんと雷太を見ている。状況が飲み込めていないようだ。
無理もない。普通ならば大騒ぎが起こるだろう。
突然人が現れたのはまだ不思議で済ませるとしても、彼は有名な『組織所属者』。ある視点から見れば『悪』だ。
――――――が、
「なんだ、雷太か。」
雷太の周囲の人々の一人がぽつりとつぶやいた。
「え!?雷太さん?」
「へ〜、久しぶりじゃん!」
「バカ副総長か。」
なんと人々は、驚きの欠片も見せていない。
それどころか、それを機に人々は堰を切ったように話し始めた。緊張の糸がほぐれたらしい。
「ほら見ろよ。オレンジ色の髪に赤いバンダナ(長いはちまき)、
それに背に差した銀色の大剣。ありゃどう見ても“強大組織”『ブラックメン』の龍 雷太だ。」
「ホントだ〜。かっこい〜。」
「ああ、修行を終えて帰ってきたんだ。(誰だ『バカ』っつったの!?)」
雷太は人々の反応に笑顔で答えた。
これぞ営業スマイル。お前はホストか。
「・・・・・・・・・。(やかましい!ナレーターが話しかけるな!!)」
「・・・あ、あの・・・サイン下さい!」
「・・・!?・・・!うん、いいよ。」
雷太はにこやかに言った。
