その世界が極めている今、ある一人の青年がいた。

 彼の名は『龍 雷太』、19歳。

 魔が巣食う洞窟で修行を始めてから3年程になる、元気な若者だ。

 彼は幼いときから、誰にも教わっていないのに『魔法』という不思議な力が使え、その力を武器にある組織に所属し、数多くの敵と戦ってきた。

 しかし、時と共に自分にはまだ力が足りない事を実感し、修行の為この魔の巣食う洞窟にこもったのである。



 やがて、その修行も終わりを告げようとしていた。

 「さて、行くかっ!」

 元気な声とともに、雷太は立ち上がり、洞窟の入り口へと歩き始めた。

 「3年で世界はどんなふうに変わったかなあ?」

 やがて、洞窟の外に出た。・・・少年小説だからって早っ!

 その雷太を陽光が明るく照らす。

 「まぶしっ。」

 雷太の顔は自然と笑顔になった。

 真っ暗闇の洞窟の中で、3年も魔法で作り出した光のみで過ごしてきた雷太にとって、 天然の光はとても喜ばしく感じられたようだ。

 雷太は大きく背伸びをした。

 「ん〜〜〜っ。3年ぶりの外か・・・なんかなつかしいような気も・・・・・・・・・ しないなあ、ここじゃあ・・・。」

 この洞窟の周りは荒野で、あるものといえば枯れ草や死骸(骨)ぐらいしかない。

 「・・・ま、もうここでやる事もないし、さっさと『ワープ』の魔法で俺の家がある『エクセス』へ帰るかな・・・。」

 そういうと雷太は目を閉じ、両手をパーの形に広げて、前へ突き出し集中し始めた。

 周りがいっそう静寂に包まれる。

 そして、『エクセス』の街を思い浮かべながら雷太は叫んだ。

 「移動魔法『空間歪曲転位(ワープ(warp))』」

  シュッ・・・

 雷太はその場所から一瞬で消えた。