第9話 “訪問−氷雨−”


 「は〜い?」

 雷太が玄関を開けると――――――

 「おはようございます。雷太さん。」

 ――――――そこには氷雨が立っていた。

 「!!??氷雨さん!?お、おはようございます!
  ・・・・・・・・・っていうか・・・・・・どうしたんです?こんな朝っぱらから?」

 「あのですね・・・・・・。」



 ――――――同日、AM7時10分――――――

 氷雨はクロの部屋にいた。

 「・・・ごはんですか?雷太さんに?」

 「ああ。」

 椅子に座り、机の上の書類を書きながらクロは言った。

 「なんでです?」

 「・・・・・・あいつは3年も洞窟の中で生活していた。恐らく、ろくなものを食っていなかっただろう。
  故にめしの作り方さえも忘れている。
  と、いうわけで今日だけでもいいから差し入れしてやってくれないか。」

 そう言っている間にもペンは書類の上を走っていて、左手に持った煙草から出た煙は、瞬時に超高性能空気清浄機に吸い込まれていく。

 ちなみに彼が書いているのは『組織再始動』へ向けての書類だ。
 ただ、敵を倒すだけでは世界を奪れるわけがない。
 出来るだけ世界と世間の理解を示し、世界と世間の公認の下で戦闘し『統べる者』とならなければ意味は無いのだ。
 3年の組織大戦停滞で動けないものを動けるようにする。それを彼はしようとしている。
 ペンは剣よりも強しだ。

 「わかりました。・・・お優しいんですねクロさん。」

 「そうでもないと思うがな。」

 クロは平然と答えた。

 「・・・・・・ま、あいつとは長い付き合いなんでな。」



 ――――――現在――――――

 「・・・と、いうわけです。」

 「へ〜、ありがとうございます!うわ〜うれしいな〜。
  ほんとにめしの作り方忘れて困ってたんですよ〜。」

 「喜んでいただけて此方も嬉しいです。
  ・・・・・・よければいい家政婦さんを紹介しましょうか?」

 雷太は少し考えた。

 「・・・・・・そうですね・・・。・・・じゃあ、お願いします。」

 《なんつーセレブな会話だ。読者への嫌味か?》