第88話 “刹那の居合”


 人々が見つめる先、
 そこに二人の者が現れた。

 片方は黒いジャケットを着て、腰を黒いベルトで締めている。
 そのベルトとスラックスの間には、白塗りと黒塗りの鞘を持つ日本刀が二本左に差しており、
 さらにベルトの両脇には、黒と銀の大口径拳銃が二丁、ホルスターに収まっている。

 もう片方はライダーズジャケットとデニムのジーンズを着、
 腰には太いベルト。そして黒いブーツを履いている。
 前者と違って、武器の様な物は一切持っておらず、
 唯一それらしい物と言えば、両腕に装着したガントレット(籠手)ぐらいなものだ。

 二人とも髪の色は黒である。

 「こいつらがあの伝説の・・・?
  ってあれ?顔が見えねえぞ・・・?」

 近づいてまじまじとみているのだが、
 何やら顔に霞がかったものがあり、どうも顔が良く見えない。
 濃い曇りガラスを前にしているような感じだ。

 「・・・・・・・・・?
  ・・・・・・・・・・・・あ・・・!
  そうか、顔が良く分かってないんだ・・・。」

 そう、幾ら文献に載っていても顔まで再現する事は出来ない。
 無理やりしたとしても間違っており、英雄への冒涜だろう。
 魔王の顔が見えなかったのもそのせいかもしれない。

 周りの人々は所謂エキストラの為、顔は適当に設定されているのであろう。

 「多分・・・・・・、
  日本刀を持ってる方がファントムだな・・・。
  ・・・・・・・・・・・・何か銃も持ってるけど。
  って事はもう片方はブラックストームってやつか・・・。」

 「ファントム・・・・・・、
  ブラックストーム・・・・・・。」

 皆が待ち望んでいた者達。
 彼らがついに姿を現した。

 皆が喝采する。
 中には涙を流す者までいるようだ。