第81話 “ジェクス・アルウィード”
空を歩く、容易。
地に潜る、容易。
空気を吸う、容易。
歩く、此れは未だに難しい。
此処の様々な物理法則にも大分慣れてきた。
最初は酷いものだったが、
此処は法則や構成物質が比較的簡素だ。
上手くやれば天地を自在に移動出きる。
ただ、地に足を付け歩くのだけはどうも慣れない。
本来我が『場』では『空』を踏んで歩いていた。
硬い『地』が非常に気持ちが悪い。
良く此処の者は硬き『地』に反発されて平気なものだ。
大地を蹴り割りたくなるので困っている。
先日、『鍵』を偵察に行ったが危なかった。
予想以上にふらふらゆっくりになってしまったので、
怪しまれなかったか未だに心配でならない。
最も、傍から見ると我が格好は相当に怪しいものらしいが。
未だに此の格好や半サングラスに共感を持った者に出会った事が無い。
センスが無いというか・・・・・・黒は格好良いものだろう?
・・・?・・・・・・携帯か・・・。
「俺だ。」
電話では名前を名乗らない、常識だ。
『俺だ、状況はどうだ?』
とはいえ掛けた方は名乗る、此れも常識だ。