第74話 “クロん家メンバーズ”


 酒場『やすらぎ』からの帰り道、
 雷太は桐の箱を持って歩いている。

 と、携帯に電話が掛かってきた。
 桐の箱を抱える手を左手に変え、携帯を右手で取る。

 「はい。」

 『俺だ。今どこにいる?』

 声の主はクロだ。

 「ああクロ。
  今はエクセスのメリーストリートに出たとこだけど?」

 『そうか、それなら話が早い。今から家に来い。』

 「・・・ん?飯の誘いか?」

 ちなみに今は昼近くだ。

 《朝から酒場に行ったのか・・・。そりゃ人いないわな・・・。》

 『いや、一緒に食いたいのはやまやまだが、俺は昼過ぎに出かけるんでな。』

 「ん?じゃあなぜ?」

 『やっと波切と山崎が到着したんだ。
  御前も会いたいだろ?』

 雷太は驚いてランプが入った桐の箱を落としそうになった。

 「マジか!?会う会う!」

 『じゃあ今から来いよ。二人とも家にいる。』

 「ああ、分かった!じゃあな!」

 携帯が切れ、しまったと同時に雷太は道を駆け出した。