第73話 “波切と山崎”


 ここはクロの書斎の一つ。

 いつもなら窓際の机で私事をしているクロだが、
 今日はどうやら誰かと話しているようだ。

 テーブルを挟んで向かい合っている。

 「そうか・・・他組織は特に動いてないか・・・・・・。」

 クロが考え込むように言った。

 「そうだ。もっとも深部にまでは入れない故確信は持てないがな。」

 相手は答えた。
 声から察するに女性らしい。

 「・・・・・・相変わらず硬直状態か・・・。」

 「そうだな。どこか大きな組織同士が公的に
  ぶつかりあうなどしない限りこれは続くだろう。
  何分、今までの硬直状態が長すぎた。
  恐らく他組織もまずどう動けば良いのか分からないのだろうな。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 「まあ、そう考え込むな。
  そういえば『あいつら』がもう着くみたいだぞ?」

 「ああ、来たか。
  思ったより遅かったな。」

 「まあ、あいつらにも色々あるのだろう。」

 そう言いながら女性はテーブルの上の封筒に入った手紙を手に取った。