第71話 “酒場『やすらぎ』”


 雷太を後ろに引き連れ、アズキは颯爽と駆ける。
 それを雷太は追いかけるので必死だ。

 《猫は速いからな・・・・・・。》

 みるみるうちにエクセスの中心地から離れていく。

 「どこまで行くんだよアズキさん!?」

 「良いからついてきな!」

 しばらく後、アズキはようやく止まった。

 ここはエクセスの中心地から外れた通りだ。

 目の前には店があり、
 その看板にはこう書かれている。

 酒場『やすらぎ』。

 「こんなところあったのか・・・・・・。」

 雷太は店を見てつぶやいた。

 エクセスの街は広い。
 流石の雷太でも、未だに知らない場所も多いのだ。

 「ここにはあたしの友達がいるのさ。
  ・・・・・・・・・ほら、ぼさっとしてないで入るよ!」

 「お、おう・・・。」

 一人と一匹は酒場の中へ入っていった。

 「あら、いらっしゃい。」

 扉を開けると同時にカウンターの向こうから声を掛けられた。

 声は女性のものだ。

 「いらっしゃいアズキさん・・・、あら?貴方は・・・。」

 雷太はその声の主を見て少し驚いた。

 亀の顔と体に、人の手足が付いている。