夜も更けすっかり人がいなくなった大衆酒場兼小料理屋『秋雨』。

 その中で、まだ三人が奥の座敷楼にいる。

 「・・・・・・そろそろ、去らせて頂くとしよう。」

 静かに猪口を置き、ジェットは立ち上がった。

 「そうか、去らばだ。」

 障子を閉めてジェットは出て行く。

 後に残ったのは姫子と秋雨だけだ。

 「全く・・・・・・下僕共め、
  主人より早く出て行くとは・・・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 「・・・・・・・・・ハーブティーを持って参れ。」

 「畏まりました。」

 秋雨は静かに出て行った。

 ここのハーブティーは姫子の好物だ。

 辺りは無音。
 本当に何の音もしない。

 「・・・・・・何故なのだろうな・・・。」

 姫子がつぶやいた。







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