「しかし、今日もあの人来なかったね。」

 中佐三人歩きながら、ヴィースがヴァースに聞いた。

 《ってか一文字違いで分かりにくいな・・・。》

 「夜月大佐か・・・あの人はなあ・・・・・・。」

 夜月大佐とは、海軍部の大佐だ。
 ただし、その姿を見た者はいないとさえ言われる。
 同じ海軍部で、部責任者のエシュア大将に聞くと、
 一人海にずっといるらしい。所謂、究極の引きこもりだ。
 ただ一応真面目らしく、会議には必ず参加している。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・電波通信だが・・・。

 「相変わらずソフェヴァラ少将も・・・・・・いや、済まん。」

 ヴァースはリーネから目をそらした。
 彼女は非常に真面目な一本気。
 適当で乱暴な性格のソフェヴァラが大嫌いなのだ。

 「で、でもそんな事言ったらあの人だって来なかったじゃねえか・・・。」

 ヴァースが焦って言った。

 「神谷大佐は仕方ないわよ・・・。
  先日ので大火傷してるんだから・・・。」

 リーネが上司をかばって言った。

 「まあ、雷太さんが相手だったしね・・・。」

 ヴィースが冷や汗を流しながら言う。

 「全く・・・・・・あの時私が一緒にいれば
  こんな事にはならなかったのに・・・・・・。
  雷太さんと魔法の掛け合いは余りした事ないけど・・・。」

 リーネ・エイトン。
 彼女は魔法使いであり、第一級魔導士の一人だ。
 通称『与神』。当然雷太とも知り合いである。

 「神谷大佐・・・・・・?」

 ヴィースがつぶやいた。

 「そうよ、大体大佐は格闘家だから魔法使いと相性は最悪――――――

 「いや、そうじゃなくて・・・・・・あれ・・・。」

 「げっ・・・!?」

 リーネは目を見開き丸くした。
 目の前から歩いて来るのは噂の人物、神谷 新右衛門だ。



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