氷鬼はざわつくIFP兵達の隊一つを指差した。

 「・・・氷るか?」



 パキィン



 指差した隊全ての者が氷に覆われた。

 周りの兵が更にざわつく。

 「全兵に告ぐ!撤退しろ!」

 レディンの声が響いた。
 声に反応するかのように、兵は一斉に逃走を始める。
 蜘蛛の子を散らすように、四方八方に散っていく。

 しかし――――――

 「逃がすかよ・・・。
  てめえら、全員・・・・・・・・・氷り散れ。」



 その後は正に地獄絵図だ。
 逃げ惑うIFP兵達はみるみる凍り砕け散っていく。

 逃げ惑う大量の人々。
 笑い追うたった一人の鬼。
 見る限り最悪の鬼ごっこ。
 果たして、ここまでの力の差があって良いものだろうか?



 2分後、立っているのは二人のみ。
 一人は氷鬼、そしてもう一人は・・・・・・。

 「てめえの部下は全員死んだ・・・。
  これは責任問題じゃあないのか?『不死身公』。」

 「ああ、部下の暴走とは言え自分は上官だ。
  後で上に謝罪しておこう。」

 「あとお前、確か『ブラックメン』の
  氷上=P・クロと知り合いだったなあ・・・?」

 「・・・・・・・・・ああ。」

 「じゃあ、他の組織含め伝えておけ。
  『勝手に世界でも狙っとけ。ただし干渉したら殺す。』・・・・・・ってな。」

 レディンの膝から下は既に凍りついている。

 「・・・分かった。・・・クロ様には伝えよう。
  ただし他の組織は駄目だ。お前の言葉は影響がありすぎる。」

 「ふん、まあいい・・・・・・。
  そろそろ死んどけ。・・・・・・・・・氷るか?」



 パキィン



 レディンは凍り砕け散った。

 生存者、一名。
 世界最悪の犯罪者『氷鬼ティノス』。

 「フフフ・・・ハハハ・・・、ハハハハハハハハ!!!」

 軽やかに雪山を歩いて行く。

 その通り道には、紅き氷が飛散する。

 鬼族では無きに、鬼と呼ばれる者。その一人。

 その力、・・・・・・人外なり。



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