第45話 “きゃんっ☆”


 しばらく走り、雷太はようやくクロの家の玄関に着いた。

 そのまま呼び鈴を押す。



 ビ――――――



 すると、しばらくして氷雨が出てきた。

 「あら、雷太さん。こんにちは。」

 「こんにちは、氷雨さん。ちょっとここの本を見に来たんだ〜。」

 「そうですか、では案内しますので付いてきてください。」

 言われるがまま、雷太は家に入り氷雨についていく。

 「ところで、今日クロは?」

 流石に道中暇なので、雷太が聞いた。

 「今日はクロさんお出かけなんですよ。
  なんでも、『水の町:デリュジャン』の町長さんとお食事だとか・・・。」

 「へえ〜・・・。会った事ないなあ・・・。」

 「あの・・・雷太さん・・・。」

 今度は氷雨が、少々聞きづらそうに声を掛けた。

 「ん?・・・何?」

 「あの子・・・、ちゃんとやれていますか?
  何分、あの子初めてなので・・・。」

 「うん!今のところは完璧だよ?
  掃除、洗濯、炊事、料理、
  その他家事全般やってくれてるし、本当に助かってる。」

 「そうですか・・・、なら良いんです。有難う御座います。」

 そうこう話しているうちに、ようやく図書室No.1に着いた。

 「ここが図書室No.1です。
  では、私はお洗濯があるので失礼しますね?」

 「うん、ありがとう!」

 氷雨は廊下を歩いていった。
 その後姿を雷太は、

 「・・・・・・。(やっぱり、氷雨さんはかわいいなあ・・・。)」

 と思いながら見つめる。

 《世の中には、叶わない夢というものもあります。》

 「やかましいっ!!」